正しいウソのつき方 7

<2/18の続き>

ただの捻挫だと思っていたら、結局朝まで少しも眠れなかった・・・。夜が明けるのをひたすら待って、朝になってからは病院の診察時間を待って・・・その日一番のレントゲンを撮ってもらった。その陰影を見て一言、白衣の紳士がつぶやく。「折れてますね」と。

とにかくアタマの中が白くなって、あとのことははっきりと覚えていない。ただ、会社を休むわけにはいかなかった。何しろ昨日は仕事をしていないんだから・・・。先輩の代わりにkeiに軽トラを運転してもらい営業所に着くと、みんなが外回りに出かけようとしているところだった。

「折れてた」。親しい同僚に短く伝えると、わかりやすく顔を曇らせる。すぐに事務所の奥で腕組みしている営業所長に見つかった。まさか本当のことは言えやしない。でも何も思い浮かばない。視線に引き寄せられるように歩き始めた背中に、「階段から落ちた」と先輩の声がした。

視線を外すこともできず、入口の扉を開き、同僚に肩を借りてまっすぐに近づいていく。所長の座る机の前で歩みを止め、同僚からカラダを離すと、左脚だけで立ちつくす。粘っこい視線が、上半身から左脚へすうっと下りていく。「階段から落ちて骨を折りました」。顔を上げて、小さくささやいた。

<つづく>