ウインドウ越しに

思いがけずryoの暮らしぶりを覗ける場所までやってきた。病室から見る風景は、背の低い鉄製の柵で囲まれ、外からすっかり隔離されていた。その敷地の内に建つここも、迷彩の同じ匂いがする。そんな遠き特異な世界で独り、一年を過ごしてきたことに誇らしさを覚え、でも、その言葉を呑み込んだままタクシーの後部席に乗り、宵闇の街に流れていく。

振り向き、リヤウインドウに向かって大きく手を振る父の姿を、右手だけを高くかざしたあいつは果たして気がついただろうか。