黒いヒヨコたち

いつしか空はすっかり灰色に覆われて、冷えたビル風が歩道を吹き抜けていく。それでも春の街並みには、笑い声があふれ、届かない陽射しを憂う気配はない。駅から雑踏と喧噪の坂を国道に沿って歩けば、真新しいスーツを着込んだ若者たちが、肩を寄せ合い、揚々とすれ違う。彩りがあるのはネクタイぐらいで、、男も女も、皆で示し合わせたように真っ黒だ。そして、曇天の船出を気にするでもなく、まっすぐに坂を下りていく。思わず振り向き、その黒い背中を見送りながら、色を付けて羽ばたく日に思いを巡らせてみる。天高く、翔る日を。