一昔

モトクロスを始めて10年が過ぎて、だから、それだけ年老いて、カラダもずいぶんポンコツになった。あの頃、そうは言っても40を越えていたはずなのに、今思えばそれでも若くて、寝不足にも強くて、カラダの反応もすこぶる良かったとあらためて思ったりする。金曜の深夜から高速を乗り継いで、奈良に入ったのは土曜日の朝。そのまま予選を一通り見物してから、宿に入る前に立ち寄ってのが、神聖なるここだ。予選の興奮と、関西の空気、そして若干の寝不足が、いたずらな動きを狂わせた。拝殿に近づくための石段、その端の直角三角形の長辺の上、斜めに飛び乗った瞬間、靴底が一気に滑って払われて、上半身が石段に崩れていく・・・。

後で「神のたたり」とmuraに笑われ、ryoには真面目に心配されて、それでもワタシのカラダは、間一髪、もう一つの脚と地に着いた右手で流血騒ぎを免れた。何もかもが新しいことばかりだったあの頃、今、もう一度、あの滑らかな石の斜面に飛び乗ったなら、華麗に半身を捻ってみせられるだろうか・・・不安でしかない。10年とは、そういうものかもしれない。