44になりました 3

<5/19の続き>

MCで鳴らした強者たちと手合わせして、あわよくば一泡でも吹かせてやろうと意気込むココロを密かな楽しみにしていた。「ノービスクラス」の走行枠で走り出し、いつも以上のチカラでハンドルバーを握り締めては、小さな排気量のエンジンをいつまでも引っ張り続ける。コースの上で追う背中に引かれ、コースサイドの視線に押されて、いつかは出られることを思いながら、必死に練習をしていたあの頃。まだ、ryoとKX85-Ⅱのテールカウルに手が届く距離を走っていた頃の話だ・・・。

最後の枠を走りきり、着替えをすませてRMから、軽トラの後ろに積み込もうとしているときだった。#31さんが背中に話しかけてきた。「子犬、連れて帰れない?」。どうやら夕べ、パドック車中泊している間に、トランポの脇に捨て犬を置いていかれたらしい。その声に驚き振り向くと、細い首にタイダウンを巻かれた子犬が2匹、#31さんの懐に収まっていた。そのカラダが時折、小刻みに震える。落ち着き無く、どこか探るような瞳は、どちらも黒くて丸かった。

<つづく>