夏の夜の嵐に

歩道のアスファルトに、雨がうっすらと染みをつけ、湿気た埃の匂いが、往来の風に巻き上げられていく。見上げれば灰色の空が低くうごめき、朝を照らしていたはずの太陽は、姿はもちろん、どこにいるのかさえもわからないくなっていた。

太平洋に浮かぶ夏の高気圧は、遠く東の沖にあって、その西の縁を台風が駆け上がってくるという。手回しのいい鉄道会社は、明日の上陸を怖れて、早くも遅延の言い訳をネットに流している。これで無罪放免とは、ずいぶん身勝手な話だ。

生温い空気の後ろから、時折冷たい風が吹いては、歩道の湿気をさらっていく。今宵、雨が降る。それもやさしくない、強い雨が。移ろいゆく季節、それでも夏を連れ去るのは、もう少しだけ待っていてほしい。