ゆく夏を追いかけて

待ちくたびれた太陽は、まだ控えめにアスファルトを照らす。「晴天」と言い切るには雲が散らばりすぎていて、空の青も白くかすんで見える。それでもGROMは、黄色いタンクシュラウドを眩しく光らせて、ウエットパッチが残るアスファルトを静かに駆けていく。125ccの4ストロークに、郊外の田畑を抜ける道は良すぎるようで、すぐにシフトアップが止まり、エンジンが唸りを上げる。

距離が北へと延びるのに合わせるように、アスファルトに映る影が少しずつ濃くなって、陽射しが夏の名残の背中を暑くする。Tシャツ一枚で走り出したワタシを、SNSで知り合った友人が軽くたしなめても、素肌に触るヒカリと風には敵わない。そのまま道の抑揚をたどり、信号待ちでゆっくりと天を仰ぐ。スモークシールド越し、雲が空を掃いたように、白く痕を印している。

渡良瀬橋を渡り、国道50号線を跨ぎ、ぶどう団地に続く短い屈曲路を駆け上がる。市の境で路肩の木々が陽を遮り、狭い道幅に日陰をつくる。瞬間、肌を冷たく風が触れて逃げ、かすかなキンモクセイの香りがシールドをすり抜けた。きっとこれが最後、季節はもう秋に傾き始めている。