封印 4

<10/4の続き>

まろやかな、いつもの姿のtodaさんに「楽しんでくださいね」と送り出され、揚々とパドックの奥へ戻っていく。今日は朝から気分がいい。急いで着替えを済ませると、黒と灰色で塗り分けられたシートの向こうへ右脚を蹴り出し、RM85Lのキックペダルにブーツの底をかける。そこから勢いよく踏み下ろせば、すぐにくぐもった排気音が林に跳ね返って、短いサイレンサーの口から真後ろへ白く大きく煙が吐き出される。横にいるkojimaさんは、まだTシャツに7分丈のパンツのまま。ここに来て追い越した。

右の手のひらでスロットルグリップを開けたり閉じたり。左手に絡めたいつものゴーグルがちょっと違く見えたのは、透き通ったレンズのせい。泥と雨にやられたブルーレンズを、クリアレンズに変えていたことさえ忘れていた。ひとつ息を吐いて、ヘルメットの奥に収めると、褐色の上に木々の緑がそのまま瞳に映る。足を乗せ換え、ステップに乗った左足をちょんと前に出して、シフトペダルを踏み込む。入れ替わるように戻ってきた見知らぬYZ125には、泥がほとんど付いていなかった。

<つづく>