童心不帰

薄墨を刷いたような雲に藍が乗り、朝がゆっくり沈んでいく。遠く、第3セクターの駅を囲むように林立する高層マンションも、輪郭がその色に溶け出している。いびつに歪んだ空は、やがて静かに、冷たく大地を濡らし始めるのだろう。積もるほどには降らないけれど、都心でも雨は雪に変わるらしい。

薄く張った地面の雪を、小さな手がかき集めては空に投げる。その手は濡れて光り、もう真っ赤だ。そんな情景を思い浮かべてはアスファルトの上、「舞い散る雪に心躍る日は、もうやっては来ないのだろうか」と独り言つ。フロントガラスにふわり雪の粒が触って、消えてなくなった。