エンスト、水浴び、前回り 2

理由は簡単。そのワダチに分け入ったのは、それが初めてだったから。そして、さっきまで走っていたラインにフルサイズマシンが2台、横に寝かされていたから。

右に折れてコースをショートカットするカーブのイン側、深く刻まれたワダチは、内側のくぼみギリギリを走っている。苦手を通り越して、嫌いな一筋は、黒土をえぐるようにして真っ黒な軌跡を描きながら、ステップアップの斜面へと延びている。朝から削られていたラインは、そこを走る若い腕利きのおかげで入り込む気持ちにならないくらいに細く、深く掘られてしまっていた。

そのすぐ左に、まだ底の見えるワダチが平行している。そこばかりを繰り返していたのに、それを塞がれてしまっては・・・好きだ嫌いだを言っていられるわけもない。リヤブレーキを引きずりながら一つ息を吐いて、RMのフロントタイヤをワダチに沿わせていく。ただちょっとだけ、減速が過ぎていた。

<つづく>