短い旅で始まる、ちょっぴり長い旅

KUSHITANIのカントリージーンズに綿のパーカーを合わせて、上から赤いKUSHITANIのGORE-TEXジャケットを羽織る。足下のGORE-TEXブーツにも、両手にはめたデニムライクなレザーグローブにも、同じKUSHITANIのロゴが光り、全身をKUSHITANIに包まれて、GROMのクラッチレバーをゆっくりと放す。真新しいMICHELINが路地のアスファルトを蹴り出し、陽光の中、4ストローク125ccがなめらかに走り出す。

遅く起きた朝、昼が近くなってから繰り出した通りに、往来は少ない。制限速度を少し越えて走るシートの上、ゆるんだ袖口から風が流れ込んでも、もう凍えることもない。すぐ脇を用水路が追いかけ、そこから左右に水を引く田圃の数々。広がる水田の中を真っ直ぐに延びるアスファルト、その遙か先を逃げ水が歪みながら駆けていく。土の乾いた匂いに、かすかな潤いが交じり、短い旅をヒカリが誘う。