卒業

高校を卒業してからになるのか・・・・・・。

十八で家を出て四十年。まさかこの歳になって、詰め襟の思い出に浸る日々が来るなんて・・・・・・それも日曜日がやってくるたびに。五歳年若の主が留守にする部屋のガラス戸には、三年の時を過ごした校舎の窓がよく映る。震える枝のその向こうで、思い出は、手を伸ばせばつかめるほどクリアだ。

目眩を覚えるほどの光の中に浮かぶコンクリートは、あの日のまま、薄く黄色を帯びてたたずんでいる。たとえその時に戻れるとして、いったい何ができるというのだろう。階下で午睡を始めた、老いた二人に、悩みの一つでも打ち明けたりするのだろうか・・・・・・。ただ卒業を迎えるだけ、だろうか。