晩春

北風の冷たさを陽射しがさらっていく。陽の下でじっとさえしていれば温もりを感じる朝。往く季節がどこか惜しくもある。桜花はすっかり葉桜に、通りのケヤキも若い枝を伸ばして、光にあえいでいる。木漏れ日の降る中、走る原付の背中に、自分の影が映る。苔生したアスファルトにステアリングを這わせて、のんびり峠でも越えてみたくなった。やわらかな晩春の陽光を仰ぎ見ながら。