月夜

二階のベランダに出て眺める月は、夕べよりもはるかに輝きを増して、手に取れるばかりに近くに見える。悠久の時、太陽の欠片を地表に届け続けるこの星は、十年前のあの日の夜も、明るく照らしていたのだろうか・・・・・・下を向いて歩いていたせいか、記憶をたどっても夜空の景色は浮かんでこない。それでも今宵の月は、灯りの落ちた都心の街からも、きっと明るく見えている。

満月を前に、影が道に青い染みを付ける。古の愉悦を楽しむ日々も一興。