記憶

見知らぬ街へ出かける往路。それが都会で四輪の場合、たいていはダッシュボードの小さな液晶と信号機のある交差点に、視界が奪われる。「この先しばらく道なり」となって、ようやく、通りに並んだ色とりどりの建造物へと視線が動く。せっかく道中だけ楽しもうと思っていたのに、取り立てて記憶に沁みを付けるような景色には、到着するまで出会えなかった・・・・・・。

そして、陽が陰り、風が涼しく吹き始めた復路。見慣れた街道を埋め尽くす赤いテールランプ、そのなめらかな軌跡だけが、今日の記憶に刻まれる。