気合の勝利か、シンメトリーの恩恵か

トラウマ-心的外傷・・・「心の傷」って、なかなか癒せないものだ。ジュリーがその昔唄っていたっけ・・・「体の傷なら癒せるけれど、心の痛手は癒せやしない」と。冷たい雨に濡れそぼった農道、その入口に並ぶ二本の鉄柱に、今日も心が痛む。赤と黄色の縞模様以外はすっかり錆ついて、出来立ての面影はない。その錆びた左側の鉄柱に、Bongoのサイドミラーを粉々に砕かれたのが1か月前の朝・・・ノーブレーキで勢いよく突っ込んだ挙句の自爆だった。以来、速度計が0km/hに近づくまで減速しないと、どうにも走り抜けられない。完全に“トラウマ”状態だ。

フロントガラスに映る空もアスファルトも、暗い灰色。色気のない背景に並ぶ鉄柱の間を、停まるような速度でゆっくりとBongoが通り抜ける。一月経っても相変わらず、ここまで長患いするとは思わなかった・・・。そんな情けない自分に苦笑いしながら、車線のない農道を真っ直ぐに飛ばしていく。そう言えば・・・と、テレビの特番で鈴木亜久里が“言い訳”していたことを思い出した。同じように車幅いっぱいの隙間を乗用車で走り抜ける時だ、思いっ切りドアミラーをぶつけて一言・・・「F1は真ん中に乗るからさぁ・・・左右対称なんだよねー。オレ、F1パイロットだから」。思わず「うまい!」と手を叩いたのを覚えている。

クルマの運転は得意じゃないからだけど、バイクでの“トラウマ”はほとんどない。MX408でも、それは同じ。6連ジャンプでショートして斜面に突き刺さっても、4連ジャンプでマシンが直立して振り落されても、フープスでふっ飛ばされて脳震盪を起こしても、そして、コースアウトして水たまりに突っ込んでいっても・・・何度も痛い目にあっているのに、それほど長く傷ついた記憶がない。気を取り直して、すぐに再挑戦、失敗した記憶を“上書き”しているからか?いやいや、それ以前に・・・バイクも左右対称だから、かな?F1パイロットではないけど、左右対称の方が楽なことに変わりはない。