返したくても返せない・・・2

9時になっても、誰も走りに行かない・・・どなたも着替え始めるのに少し時間が掛っているようだ。暖かくなるとはいっても12月の朝、肌に触る空気は、冬の冷たさに満ちていた。さすがに夏のような訳にはいかない・・・「暑いっ!」と騒いでいた頃が懐かしく思えてくる。元気がいいのは、冷たく引き締まった“冬”を吸い込んで回る、RMぐらいのものだ。

・・・今日、福岡に帰る。そのために羽田に居るところ。「タイミングの悪い時にかけてきやがって」って、どちらかと言えば“ちょうどいい時”だろ?一体どうしたんだ・・・。聞きとれないほど“ろれつ”の回らない声、いつもと違っていたのは、そのせいかもしれない。MX408に居ると話したら、小さな声で「いいなぁ」とだけ答えて、そばにいたお姉さんと代わってしまった・・・この一言が、最後の声だった。

珍しく真っ先にコースへと走っていったのは・・・maraをよく知るmachi-sanだ。KX250Fの渇いた排気音が、上りの斜面に反響している。これが巡り合わせというものか・・・。先に着替えを終えたryo、muraが愛用していたAnswerのウェアに身を包んでCRFに跨っている。その間に、早くもmachi-sanがパドックへと帰還・・・タイヤの空気を抜きに戻ってきた。どうやら日陰は、かなりのマディらしい。

先週よりも状態はいいけど、二つ目の上り、その前後が激しいマディだ。とりわけ“前”の方、一つ目の上りから下り切っての左コーナーは、車体が暴れて思い切ってスロットルを開けられない。エンジンのせいにする訳じゃないけど、RMにはかなりしんどい路面だ。身体を後ろに引いてスロットルは開けて・・・と頭ではわかっていても、なかなか出来るもんじゃない。“一触即発”な感じに左肩をかばいながら走っていると・・・わずか数周で軽く腕が上がってきてしまった。

<次回に続く>