返したくても返せない・・・4

冬至の近づいている空、暖かな陽光が低く傾げて射し込んでいる。同じマシンとは思えない走りを見せるCRF+ryoの姿、muraには見えているだろうか・・・見えているとしたら、きっと奴も穏やかじゃないだろう。完全なフリー走行、なかなか“身内”が揃うこともなく、パドックとコースを行ったり来たりの繰り返し。10時ぐらいになって、ようやく落ち着いてきた身内のお仲間たち・・・パドックの会話も弾むようになってきた。マディ攻略に続くお題は「背筋とトラクション」。雑誌の特集にでも出てきそうな話だ。

後ろから降る低い光。その光に照らされて、斜め前の地面に黒い影が落とし込まれている。相対して走るときは“いただけない”冬の陽射しも、こうして輝く分には面白いことを教えてくれる、いい“先生”だ。いつもは人伝にしか聞けない自分のフォームが、割にくっきりと写されていて・・・写真や動画のようにはいかないけど、正直で結構わかりやすい。で、どうかと言えば・・・まだ“曲がって”いる。細く格好良く、しかも駆動力を逃がさないために、目標としている真っ直ぐな背筋の“線”とは、ちょっと違っていた。ランドセルのCMのように「背筋、ぴーん!」とはいかないね、なかなか。

フリー走行なのに、あまりパドックで休むこともなく、走る続けるお仲間たち。練習嫌いなmuraがハッパをかけているのだろうか・・・自分のことは棚に上げて。まあ、奴らしいと言えば奴らしい。中でもryoは「腕も上がらないし、不思議と疲れないんだよ」と、CRFを自在に操り、走りまくっている。二つ目の山を越えた右コーナー、アウト側を“探りながら”よたよたと走るRM。その不安定な走りをあざ笑うかのように、まだ誰も走っていないイン側にマシンを突っ込み、激しく泥しぶきを巻き上げて立ち上がっていく。「なるほど、そのラインはありだな」・・・ひと味違う走りといい、今日は“特別”なのかもしれない。

最後のテーブルトップを跳び越えて、ホームストレート。アウトに膨らみながら加速する。恐怖心と折り合いがつかないまま、もどかしく走っていた連続ジャンプセクションも、少しずつ思い出になっていく。マシンを水没させたり、バックドロップを食らったり・・・keiの目の前で前転も披露したっけ。6連が4連になっても変わらぬ恐怖、真っ先に挑戦したのはryoだった。ジャンプがうまくなったのも・・・ちょうどその頃だ。「ここで跳ばないと・・・一週間悶々とする」のが嫌で、思い切って跳び出した感覚も・・・今では薄れかけている。ただ、muraだけが最後まで慎重だったこと、そして、挑戦してアバラを折ったこと・・・それだけは記憶の奥に残されていた。

<次回に続く>