冬の名残のにごり湯紀行~第二話

2月最後の週末。前日の金曜日が春本番の陽気だったせいか、中禅寺湖畔に雪はほとんど見えなかった。湖面に落ちる陽射しは、強く眩しく、風の軌跡が光の波になって、湖岸へと寄せてはふっと消えていく。太陽が照る窓際に座っているからか、左の頬と耳たぶが真っ赤に熱くなっているのがわかる。「竜頭の滝」のバス停を過ぎると、再び道が“ヘアピン”を描いて昇り始める。竜の頭を上から覗くように、滝を回り込んだ先には、枯れた原野を雪が覆う、冬の奥日光らしい景観が広がっていた。

戦場ヶ原の反対側、林の中に、クロスカントリースキーを楽しむ姿が続いている。競技中継をテレビの中で見たことはあるけれど、こうして“楽しんでいる“姿を見るのは初めてだ。スキーがモトクロスなら、さしずめエンデューロといったところだろうか。いくぶん大人しい色合いのウェアを、路線バスが次々と置き去りにしていく。光徳牧場の脇に立つ「日光アストリアホテル」で、そんなスキーヤーが5人ほど乗り込んできた。バス停にしてあと二つ、三つで湯元温泉に着くようだ。

<次回に続く>