ツーリング

極上の空に 5

左に曲がれば東北道の佐野入路、右は小山から茨城笠間、水戸へと流れる国道五十号線を交差して、下都賀西部広域農道を直進する。みかも山の東を通り過ぎ、大平ぶどう団地に続くカーブをいくつか楽しんでから、栃木市に出ると、ここから北側、スイーツに向か…

極上の空に 4

渡良瀬川を、こちらも一本外れた道で短く越えて、東武鉄道の線路を横切り、緑の桜並木をなぞるように直線をたどる。ここの桜を見なくなって、もう二年が経つ。そんな湿った気分を、対向車のフロントガラスが、訳もなく眩しく照らし過ぎていく。佐野に出る手…

極上の空に 3

まず向かうは、栃木県栃木市。日光へ北上するルートを、そこで決めることにした。三台のクォーターマシン。と言っても、すべてブロックパターンのタイヤを履くオフロードタイプ、そこに一台、ピンクナンバーのハンターカブが混ざる。巡航速度は四輪の流れに…

極上の空に 2

待ち合わせは八時、国道四号線のバイパスと圏央道が交わるインター脇にある道の駅だ。梅雨が明けるのを待ちかねていたバイカー達が、自慢のマシンをひっさげて、四輪のスペースに比べたら圧倒的に小さい駐輪場に入っては出てを繰り返す。ローライダーの二気…

極上の空に 1

薄く張った雲が晴れて、空に高く、夏の太陽が現れた。七月もまだ中頃のこの時期に関東で梅雨が明けるのは、例年より早いことだと言う。お誂え向きに訪れた週末に、ひさしぶりに単車を引っ張り出した。「梅雨明け十日は雨知らず」の言葉を信じたわけではない…

夕空

昨日を引きずったままの、雨の月曜日。気温の急降下に合わせるように、やる気も真っ逆さまに転がり落ちていく。その日暮らしを気取る気分屋に、この春は忙しない。 惰性のテレワークをこなしていると、西の空が明るく割れて、ようやくアスファルトにシミが乾…

小さな冬旅~続き

空冷4ストロークのシングルエンジンは、シリンダーがフロントタイヤへと倒されていて、その様から水平型と呼ばれている。小排気量車に多いレイアウトは、シリンダーの立ち上がった垂直タイプに比べると、どこか心許なく、頼りなさげに映る。走行風が直接シリ…

小さな冬旅

ユニクロの暖パンも一時間だった。 風のない、穏やかに光る昼下がり。彼の非力な4ストロークは、125cc分の混合気を規則正しく吸い込んでは吐き出して、ひとつひとつ、土手の上のアスファルトにこぼして走る。時々、フロントタイヤの巻き上げた小砂利がフェン…

x/100

地平の彼方へと消えて無くなる直線路に、天空の先へと九十九折りに駆け上る屈曲路。海上を渡るなだらかな曲線に、地中を突き抜ける暗い隘路。北から南へ。急峻な国土には、うまそうな道がたくさん散らばっている。 ワタシはこのうち、どれくらい走ったのだろ…

島旅 後編

<5/13の続き> そんな大陸の広がりすら感じさせる、地平線が見える北の大きな島へ。最後に、一緒に渡ったryoが、今や住人となって二年目の春を迎えている。過酷な仕事を選んだ上に、その厳しい寒さを乗り越えて、少しはたくましくなったように思うのは、親…

島旅 前編

てっきり南の孤島をめざして旅立つはずが、気づいたときにはもう、平積みになった雑誌を手に、会計の列に並んでいた。高速道路は縦横に延びて、海峡をくぐって新幹線が上陸。数十キロに及んだ海岸線の未舗装路も、初上陸の記憶とともに、すっかりアスファル…

まだ足りないか・・・

1/2、百点満点の試験なら50点だ。 30年を越える付き合いはKISSの次に長いし、そのほとんどを遠出に当てていたのだから・・・意外というか、ちょっと淋しくなった。こんな狭い日本でも、四半世紀と少しではまだ足りないらしい。10分の1、とりあえず宮古島の…

黄金

2日と6日を休んでしまえば、10日のロングバケーションがやってくる。 長い休みを全部使い切って、本州の西の端やら北の端やらをめがけて走り回っていた自分を、窓越しの澄みきった青空に思い出す。前の晩から寝る間を惜しんで、テントやらシュラフやらを…

274.6kmの休日 6(完)

峠に近づいた途端、車線が一気に消えてなくなり、鬱蒼とした林の中は、濡れた細道になった。先行して逃げ切ったのはGROM、今日のところはワタシの勝ちだ。枯れ葉がはりついて滑りやすくなった路面を、そのままのオーダーでゆっくりと下っていく。突き当たっ…

274.6kmの休日 5

前をゆずられたori-chanと、愛機の4ストローク125ccオートマエンジンが、低くうなるように回り、小砂利を蹴り散らしてアスファルトを駆ける。不意をつかれて大きく車間を開けられてしまう。少ない排気量に、強くなる勾配。気まぐれに降る光の中を、意地にな…

274.6kmの休日 4

目指す粕尾峠の荒れ具合が想像できないほど、2車線を保つアスファルトが思川に沿って左右に揺れながら、ゆるやかに高度を上げていく。途中、東屋と簡易トイレが据え付けられたポケットパーキングにマシンを停めて、二人並んで缶コーヒーを啜っていると、遠く…

274.6kmの休日 3

<10/19の続き> 佐野のアウトレットモールは素通り、国道50号線を少しだけ走ってまた、みかも山の南麓へと高規格の片側2車線から広域農道にそれていく。広めの道はいくつかのアップダウンを繰り返してみかも山から大平山の麓をすり抜け、栃木市へと続いてい…

274.6kmの休日 2

<10/12の続き> ピンクナンバーの原付二種らしく、国道のバイパスではなくて細い県道を選ぶと、お互いがお互いの姿を奇妙だとシールドに映しながら、弾けるように走り出す。前を行くワタシが中央線に寄って、後ろに着けるori-chanが路肩寄りを走る。見事な…

まだ見ぬ明日へ 6(完)

<10/13の続き> なだらかに整地された園地は青々として、水面へゆるやかに落ちている。その真ん中に、キャンバスをヒザに抱えた白髪まじりの女性が、右手で絵筆を突き出して、小さく首を傾げている。彼女の視線をたどるまでもなく、目の前に鏡池が現れ、群…

まだ見ぬ明日へ 5

<10/10の続き> 湯田中の宿に向かう途中、上信越道を長野インターで降りる。 Bongoの助手席にkeiが座り、荷室にはシロとネロが仲良くカゴの中。旅に出る格好も、すっかり変わってしまった。一泊で走れるところは、ほとんど回ってしまったから、バイクで泊ま…

274.6kmの休日

「五霞の道の駅に8時で」。走り慣れたバス通りの上、いつもより2時間は早い朝を切り裂きながら、GROMを走らせその場所へと急ぐ。待ち合わせの場所と時間を決めてその日を待つのは、思い出すこともできないほど遠い記憶の中にある。もう再び訪れることはない…

まだ見ぬ明日へ 4

ツーリング仲間が、一人また一人とバイクから遠ざかっていって、いつしかワタシの中の景色は、見覚えのあるものばかりになった。そしていつの間にか走り出す前にもう、映る景色も帰ってくる時間さえも浮かんできて、バイクに跨がる前からツーリングが終わっ…

まだ見ぬ明日へ 3

バイク雑誌ではなく、あえて旅行雑誌から行き先を拾い出すことが、何かとても大人な所作のような気がして、走りよりも仲間に今で言うサプライズと、そのサプライズを24撮りのフィルムにうまく切り取ることが楽しみになっていった。マシンも2ストロークから4…

まだ見ぬ明日へ 2

<10/4の続き> 学生時代から付き合いのある伊豆半島にも飽きてきたとき、耳に届いた「軽井沢」や「小淵沢」の響きには、どこか大人の匂いがしてた。ツーリングに向かう先は、南から北西へと延びていき、埼玉から山梨、そして長野へと、少しずつ湾岸エリアか…

まだ見ぬ明日へ

バイクでツーリングを始めた頃、いつか行きたいとずっと思い描いていた北信濃の小さな池は、まだ濃い緑に隠れるように佇んでいた。風が後ろの山から水面に吹き下ろしては、やわらかに広がる林とススキの葉を細かく揺らしている。どうやら来るのが、少し早く…

BMW

FaceBookの友達にひとり、似たようなバイク遍歴を持った奴がいる。ロードからモトクロスに迷い込み、最近になってCBR1000Rを手に入れてからは、アスファルトの上で過ごす時間が長くなったようで、引きずられるようにツーリングにもよく出かけている。その友…

やっぱり・・・

どこへ行くにも、まったく早起きできなくなってしまった。 前夜、ベッドにもぐりこんでも目が冴えて眠れなくなるような、ワクワクする気持ちは・・・・しぼんだ風船のようにひしゃげて、いつしかすっかり小さくなっていた。地図を広げてみても、関東甲信越の…

ツーリング!

モトクロスを始めて、すっかり遠乗りをしなくなった。 3.3㎡のガレージには、窓際にCRF150RⅡとKX85-Ⅱが寄り添って並び、反対側の壁でスチール棚とカラーBOXが、工具を広げた木製のベンチをはさんでいる。橙色のDUKEは、そのベンチの横にサイドスタンドを立て…

北の国から

「明日は雨みたいだし、まだ明るいから・・・襟裳岬、行っておこうかな?」 「あと40kmで・・・黄色い看板が目印って言われたんだけど・・・真っ暗で何も見えないんだ」 上陸初日。苫小牧港から国道を南下して、岬を目指すか、ショートカットするか、なかな…

真夏日のはずが・・・

u-chanのNinjaと走るのは、ほとんど4年ぶりになる。そして、enduとは――rgv250で煙を撒き散らしていた頃だから・・・もう10年は過ぎているかもしれない。モトパーク森に行けなくなった金曜日、その二人にメールをしてみたら、どちらからもOKが返ってきた。西…