7月最後の日曜日~前編

過ごしやすい夜を重ねているうちに、8月になっていた。もう2日だ。今朝も、開け放った窓からそよぐ、涼しさで目が覚める。8月らしさは無い。そして、起き抜け。7月が終わったことに、何かを忘れている気分がした。

テレビの天気予報が、大型の台風が近づいていることを告げている・・・そうだ、思い出した。この前の日曜日は、7月最後の日曜日。あの日も台風が近くにいたんだ・・・それも、もっと近くに。

時折雨の舞う日曜日は、涼しい一日だった。WESTWOODの入口には、新型のモトクロッサーとハーレーの巨体が隙間なく並べられていて、“夏の祭典”を知らせるポスターは見つけられなかった。「鈴鹿8時間オートバイ耐久レース」・・・通称“8耐”が開催されたのは、ちょうどその日。スタートは・・・到着してから30分後だったはずだ。

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台風のおかげで、照ったり降ったりが繰り返される。まったく落ち着かない天気に、雨天用と晴天用のタイヤをいつ交換するか・・・こんなことが勝負の分かれ目だったような気がする。人いきれと雨あがりの太陽。もやもやと蒸したグランドスタンドで、まずはルマン式のスタートを見物。それからは・・・何せ8時間だ、のんびりと観戦しながら、西コースへ・・・。

スプーンカーブ。いきなり降り出した大粒の雨で、コースが煙る。水しぶきを上げて、一台のマシンが路面を流れてきた。滑る途中で火を吹いたのは、赤と黒に塗り分けられたヨシムラのマシンだ。あわてたコースマーシャルが、一斉に消火器の口を横たわるマシンに向ける。白いもやが晴れると、現れたのは真っ白になったマシン・・・。それでもライダーはマシンを引き起こして、タンクの下、エンジンとキャブレターを、右から左から、しつこく何度も覗き込んでいる。

<続きは・・・後編に>