快晴、無風。 9

この後がよくない。好きなはずの上り坂も、すべる赤土に、アウト側はバンクもなくて・・・そのまま目一杯はらんでいくと、林の中に消えてしまいそうだ。木々に囲まれて、暗く湿っている路面は、傾けたリヤタイヤを簡単に空回りさせてくれる。外に向かって大胆に立ち上げる勇気も無いから、ギヤと勾配を合わせるのにも苦労させられる。「Moriの奥の上りに似てるね」ryoが言うとおり、辺りを包み込んでいる色合いも、どことなくモトパーク森を思わせる。となれば・・・その上りを得意とするKX85Ⅱが、一気に背後に迫ってくる。まともに開けられないワタシとRM85Lとの距離が、少しだけ離れた。

茶褐色の路面は、ゆるく左に曲がる。“上り”と言っても真っ直ぐじゃないから・・・からっきし意気地がない。“渋い”右手に失速するRM。あわてて半クラッチを当てると、クラッチレバーに添えた指のふくらみに、クランクシャフトの震えが伝わり、車体があえぐ・・・。坂を上りきって、S字の最初は左コーナー。固く削られたワダチの不細工な溝に、ギヤを一速まで落として入る。“S”字らしく、ほとんど直線のないまま、すぐに右へと切り返す。立ち上がりは急な上り斜面、その先に青い空が覗いている。短い助走で、もう一度半クラッチを当てて・・・リヤタイヤが横を向いたりしない、ギリギリの“加減”が、どうにも苦手だ。

<次回こそ・・・最終話に続く>