快晴、無風。 終

リヤタイヤがうまく斜面を蹴りつけて、瞬きほどの時間、無重力になる。着地してから、今度は右に左に細かく車体を振り回す。高低差の中にある連続するジャンプ・・・減衰を締め上げた足回りが、ほっとかれたまま荒れた路面に弾かれては、タイヤが逃げる。左90°コーナーの真ん中に、さらりとできたラインを素直にたどり、崩れかけたの跳び出し口から、最後の二連ジャンプを越えて・・・RM、KXと続いて最終コーナーを抜けていく。

“力”の差を“砂塵”に変えて、インフィールドで詰め寄ってきたryoに浴びせかける。得意のジャンプを封印していては、勾配のある上りでRMを捉えることはできない。明るい茶色と乾いた白のまだらな坂を、何度もフロントタイヤを浮かせて駆け抜ける。パドックから姿が見えなくなる、二つ目のシングルジャンプを越えてからは・・・少しずつKXの排気音が大きくなってきた。暗がりに延びる下り坂、ケバい原色の二台が徐々に絡み合ってくる・・・。

コースで一番低い、奥の下りから、気弱に立ち上がるRM。その黄色い車体が近寄れなかった、アウト側にあるわずかな縁に、両輪を合わせるKX・・・途中で半クラッチが必要になる走りを、鮮やかな緑が“大外”から被せてくる。深く倒した車体の上、ryoがスロットルを開け放つ・・・左コーナーをたぐるワタシの視界に、真横からKXが入り込んできた。先にインを取ったのはryo。待っていたかのように仕掛けて、前に出ると・・・そのまま引き離しにかかる。

わずか4つのコーナーを過ぎる間に、ryoの背中はどんどん離れていく。地力に勝るだけに、前を走らせると・・・やはり手に負えない。気持ちだけは失くさないように、目で“先”を追いながら、第一コーナーを回る。ここからは、なぜか差が広がることもなく、反対に少しずつKXの車影が大きくなって・・・ギャラリーストレートの先、一つ目のシングルジャンプで並びかける。そして、また、だんだんとryoの背中が小さくなっていく。

インフィールドで離ればなれになっては、ギャラリーストレートでくっ付き合う・・・そんな周回を、二台でただ繰り返す。二人の走りを知る者もいないコースには、陽射しがあふれ、2ストロークの乾いた排気音だけが響く。結局、5周ほど同じことを続けてから、先を走っていたryoが最終コーナーを曲がらずに、コースを出ていった。その後に着いてRMもコースを後にして・・・二台並んでパドックに通じる小道を上がる。Bongoまで戻ると、ちょうど昼休み・・・いつものBAY FMじゃなく、ジャズピアノが、緑色の芝の上をそよいでいた。