“7200秒”の中華三昧~後編3

<12/3の続き>

この六人が宴席に顔を揃えるのも、この先、花見の頃までは無さそうだ。忘年会には少し早いけど、この歳になって“初めて”の体験ばかりだった2011年に、皆がジョッキとグラスを傾ける。他に誰もいない部屋、高い天井にガラスのぶつかる音が反響して、ガチャガチャと宴会が始まった。一番に注文したエビチリと、キクラゲの卵炒めが、亭主の両手に載せられてやってきた。六人前のエビチリは、一人4尾か5尾ぐらいの勘定だろうか・・・キクラゲの方は“てんこ盛り”すれすれの“山盛り”。それを小皿に取り分けて、箸をつける。

ほのかな牡蠣の風味が、炒めた卵にからんで・・・キクラゲともやしと一緒に口へ放ると、自分の家で食べているような不思議な味がした。きっと日本人の好みに合わせたんだろう、ちょっと濃い目のエビチリは・・・舌をヒリヒリさせることも無くて、思わず白いご飯を頼みたくなる。一人前を注文しても、三人前でも、出てくる皿は、みな同じような盛り。30cmはある白い丸皿に、黒酢の巣豚や回鍋肉、チンゲン菜の炒め物が盛られて、注文どおりにどんどん運ばれてくる。どれもこれも、ご飯にぴったりの味付けだ。中でも初めて口にした「黒酢の酢豚」は、舌に残るまろやかな甘みが絶品で、すっかり気に入ってしまった。これで玉ねぎとピーマンが違う野菜だったら・・・一人で平らげられたかもしれない。

<後編4に続く>