2011もそろそろ・・・ 5(完)

コントロールラインを越えて、もう一度左にマシンを翻す。ホームストレートを駆けるRMの上で右に視線を流すと、左にひねられていた蛍光橙色のヘルメットが前に向き直り、#129のCRFが第一コーナーに加速を始めた。第一コーナーを大きくアウトにはらむRM・・・交差したラインの先に着いたのはCRF150RⅡだった。二週間前、KTM使いのharada師匠に教えられたとおり、第二コーナーまでに“ひと吹かし”・・・思ったとおりCRFが一気に近づいた。

練習不足なのか、開けっぷりが今ひとつの師匠・・・得意のフープスも、後半で窪みにつかまって、いつもの後ろ姿じゃない。そのままバックストレートで並んで、スネークで前に出る。お互いに感じるものがあったのか、ひさしぶりに揃いのチームウェア“Twisted”で、もつれ合う二台。そして、お互いを知り尽くした二人。インから立ち上がるCRFのフロントタイヤを、アウトからRMが掠めていく。接触すれすれの走りを、前に後ろになって、二人、存分に楽しむ。

それでも、このところの師匠は・・・なかなか、へばらない。後ろに着けても、先行していても、CRFの脅すような排気音は途絶えないまま、揃ってパドックに引き上げて・・・を繰り返す。だんだんと調子の出てきた師匠、そのCRFを追うRMのクラッチ板は、本来の役目を徐々に終えようとしていた。リヤブレーキを踏んでも、タイヤが路面の上を流れるだけで、危うくバンクを突き抜けていきそうになる。そして、昼休みをはさんで午後の一本目が・・・今年最後の一本となった。

13時30分にコースへ出ていって、戻ってきたのが15時ちょうど。まるまる90分を本気で走り切って・・・風に触れれば倒れてしまいそうなくらい消耗した体で、Bongoまで帰ってくる。走り始めてすぐ、ニセmanabuにいいところを見せようと、フープスの入口で右手を早く捻り過ぎて・・・ひとつ目のコブを斜めに離陸。右に左に、コブへ当たる度に大きく振られるRM・・・「最後にやるか?」覚悟しながらも、何とか振れを収束させようと、ハンドルを押さえる。七つ目のコブで、やっと振れが収まり、池の手前でRMが手の内に舞い戻った・・・ふぅーっ。

90分のほとんどを共にしたのは、他でもないiguchi師匠だ。ただ、競り負けていたのはワタシの方・・・それはマシンのせいだけではなかった。「先には終われない」ストレートひとつ分離されて、車間まで“調整”されて・・・ホームストレートへ折れる度に、後ろをうかがう師匠が手を上げるまでは、RMを止める気はなかったのに・・・何度目か、フルサイズマシンの集団に飲み込まれて、さすがに緊張が解けてしまう。それを“潮時”としたiguchi師匠が、ホームストレートに入らず、スターティンググリッドの前にCRFを運ぶ。その横にRMを着けて「やめないねー」と声をかける。ゴーグルを外して笑う師匠・・・もう、それで十分だった。