今日から始まり。

いつものバス通りは、行き交うクルマも少なめ。駐車場から駅へと延びる道にも、歩く姿がほとんど見えない。薄い化繊のパンツには固く冷たい空気がまとわりついて、ヒーターで温まった体が、起き抜けのように縮こまる。いつもは敬遠するはずの急行「浅草行き」に、空いている席を見つけ急いで乗り込んだ。街は、まだ“本気”じゃないらしい。シートの下からじんわりと広がる温熱が、ゆっくりと体をほぐしていく・・・北千住に着いた時、このまま浅草まで行ってしまいたいと思うほど、いい気持ちがした。

一週間振りに職場で過ごした九時間は、長くも短くもなく、ただ眠気を誘う、寒いだけの時間だった。終業の鐘を聞いてすぐにパソコンの電源を切り、仲間たちと連れ立って、夜の街へと降りていく。色豊かな壁際の電飾と、ガラス張りの飾り棚から溢れる白い光で、夕闇の下、歩道は明るくにぎやかだった。薄茶色の短いスカートから、黒いタイツの脚を伸ばす女の子が、その光を渡るように歩いている。そのまま歩道を左に逸れていく彼女と、まっすぐ南口の階段を上るワタシ・・・帰りの常磐快速は、少し本気を出していて、仕事帰りの人々がひしめいていた。