小寒。午後。橙色。

小寒。ここから大寒を頂点にした立春までのひと月が、二十四節気で最も寒い時季に入るらしい。許されることなら、“巣籠り”して春を待ちたい・・・結露した窓の外、ゆがむ灰色の景色に、本気でそう思う。春を通り越して、いっそ夏が来れば・・・冷たい鉄板のようなBongoのビニールシートに腰掛けて、ハンドルを指先だけで回す。ただ、二日目ともなると、少しは馴染んでくるようで・・・今朝は、肩を下ろして歩いていても平気だった。

午後。狭い道路の両脇に雑居ビルが建ち並んで、冬の低い光を遮っている。初めて入るそば処、かつ丼と温かいそばのセットで昼を済ませて、陰った歩道を西日暮里駅まで歩いていく。ひさしぶりの地下鉄に20分ほど揺られて、赤坂のひとつ先、乃木坂で降りる。東京ミッドタウンの裏手にあるマンションの一室。昔の話と仕事の話をごちゃまぜにして・・・ガラス窓から差し込む陽の中、明るく時間が過ぎていった。

橙色。乃木神社の前で少し考えて・・・田町まで歩いてみることにした。携帯のナビで調べてみると、3.6kmとある。30~40分ほどだろうか・・・急ぎ足で歩いてちょうどいいくらいの、冷たく弱い風が吹いている。赤坂、六本木界隈をそぞろ歩きとは、何とも贅沢な話だ。外苑東通りを南東に、芝公園へと下っていく。飯倉の交差点で国道一号線を右方向に曲がれば、あとは一本道だ。東京タワーのしなやかな脚線が、夕陽を浴びて、その橙色を燃えるように輝かせていた。