#357~その6(完)

harasa師匠のKTM125SXに続いて、kusaba車のヨシムラ管が、猛々しい音を撒いてパドックから消えていく。午後になってずいぶん回復したのか、コースからはハリのある良い音色が流れてくる。マディ用に準備した古いX-FIREに足を入れ、白いVFX-DTを被り、CRF150RⅡのキックペダルにブーツの底を掛ける。愛機RM85Lのオーバーホールが終わってからだから・・・コイツに火を入れるのもひさしぶりになる。チョークノブを引き出して、スロットルを何度か煽って、思い切りペダルを蹴り下げる・・・何度蹴りつけても、まったく目覚める気配がない。遠くでitoさんのパパが、ニタリと笑いを投げている。せっかく持ってきてやったのに・・・機嫌はあまり良くないようだ。

一度ヘルメットを脱いで、センタースタンドをマシンの脇に据える。左足をそのセンタースタンドに載せ、今度は右足にしっかりと体重を掛けてペダルを踏みつける。何度目かのキックでようやく火が入った4サイクルエンジン・・・スロットルを捻れば、それまで不機嫌だったのが嘘のように、すっきりと重たい排気音が、頭の後ろから響いてくる。いい加減な右手にも、エンジンが素直に応えてくれるまで、何度もスロットルを開けたり閉めたりを繰り返す。左のサイドカバーに貼られた黒い357は、もうほとんど剥げかかっていた。