フリー&フル 8(完)

逃げる後ろ姿が、はっきりと揺れる。ステップダウンを跳び上がった先では、風がマシンを揺らす。そのたびにスロットルが戻されるから、後ろに着いているのは・・・やっぱり気が楽だ。フープスを等間隔のまま走り抜けて、バックストレート。ここは、さすがにデカイのが速い。スネークヒルへ上る右コーナー。ここに刻まれたワダチまではくっついていかないと・・・iguchi師匠にも散々言われた苦手の右コーナーで、離されてしまいそうだ。

先にバックストレートから右に消えていったKX250F。その差は、レースなら、一呼吸おけるくらいになっている。ぎりぎりまでブレーキレバーを引くのを待っていたら、また飛び出しそうになった。“流れ”をぶった切るようなブレーキングの後、右肩から体を入れて、スネークに続く短い直線に向き直ると・・・最初の山の手前で#31がエンジンを止めていた。必死にキックペダルを下ろすカワサキ#31さん。「もう一息!」のところで・・・先にコーナーを抜けられてしまった。

せっかくの“敵失”をものにできず、KX250Fのすぐ後ろで、saitoさんのチェッカーを受ける。朝からまともに走って迎える15時30分。最後まで固いままの路面で“フル”タイムを走りきったのは、何か月ぶりだろう。二人の師匠に囲まれ、フルサイズの仲間とも遊べて・・・いつもの倍は楽しめた気がする。帰りに“魔法の券”を作ってもらえば、okano師匠も戻ってきて・・・こんな日がたくさんやってくるはずだ。