真夏の祭典! 4

9時20分。雲が白く取れかけてきて、その向こうにあった太陽が姿を見せたり隠したり・・・それだけで、うんざりするほどの暑さだ。ヘルメットをかぶって、ゴーグルをはめると、急に息が苦しくなる。すぐにRMのシートに座ってキックペダルを踏み下ろす。一回のキックで目覚めたエンジンは、熱くよどんだ空気を吸い込んでも、軽やかな乾いた音を立てて回っていて・・・右手の動きにも、反応が俊敏だ。薄くなった混合気が、気温の上昇にうまくはまってきたようだ。okano師匠は、パドックに残ったまま。先に出ていったfさんのCR85Rを追いかけて、RM85Lが走り始める。

まばらな台数の中、fさんもoさんも、まだ探るようにコースをたどっている。すり抜けていくのは、決まってフープスの辺り・・・とりわけfさんは数ヶ月ぶりのCR85R、しかもMX408は年単位のご無沙汰とくれば、そうそう簡単に攻略されては敵わない。静かな赤い車体に新鮮さを覚えながら、左に大きく旋回して、バックストレートを駆け上がる。ロングテーブルトップジャンプを越えて、逆バンクからスパイン、そして、ダブルジャンプ・・・日照り続きのコースにはたっぷりと水が撒かれていて、黒光りした路面はどこにもなかった。バックストレートを折り返す左コーナーだけ、“おいしい”ところに白い砂がたまっていて気になるくらい。割と走りやすくて、なぜかいつもより速くなった気分がした。

<つづく>