真夏の祭典! 5

軽やかに動くRMの上で、アウトやインのラインを試してみる。レースを意識した走りに思わず酔っていたら・・・やたら空吹かしして突っついてくるのが、後ろから近づいてきた。4ストの重ったるい音が破れるように響いて、かなり耳障りだ。「きたか?!」・・・今日のミニモトクラスは、ほとんどが2ストマシン。てっきりnakaneさんのCRFが吠えているのかと、フープスを抜け、アウトにはらみながら振り返ると・・・ゴーグルレンズの隅に、同じCRFを駆るokano師匠が映り込んでいた。ただ、威勢がイイのは音だけで、いくら待っても仕掛けてこない。結局そのまま、ゆっくりと遠ざかる音を従えて一回目のチェッカー。パドックへ引き返す。完全に止まったマシンから離れる瞬間、内にこもった熱が汗と一緒にドバッと外に噴き出してきた。ゴーグルを外した世界は、強烈な光線が満ちていて・・・あきれるほどの真夏が、揺れていた。

ヘルメットを脱いで、そのまま上半身もはだけて、井戸水で頭ごと冷やして帰ってくると、師匠のマシンが常連たちに囲まれていた。ちゃっかりワタシが持ってきたセンタースタンドに載せられたCRF150RⅡ。エンジンの辺りに顔をのぞかせているのは、守谷RTの整備担当であり、妻のために“ホールショット”を約束する良き夫であり、ワタシと同色のRM-Z250を駆る・・・ざりぱぱだ。「まったく付いてこない」右手を捻っても、ボボボッと息をついて前に出ないらしい。この気温だ、ガソリンが濃いのかもしれない・・・周りを取り囲んだ“にわか”メカニックたちの、それが共通した意見だった。コーナーの立ち上がりだけじゃなく、ジャンプの斜面でも失速を始めるマシンは、「面白くない」を通り越して「怖くて走れない」・・・激昂したような排気音は、無理矢理“半クラッチ”でエンジンに言うことを聞かせようとしていたからだった。

半クラッチが大変なのが、よーくわかった」そう笑いながら、真剣にメインジェットの番手を確認するokano師匠。練習の途中、セッティングを変えてまで真剣に遊ぼうとする・・・そんな師匠が大好きだ!

<つづく>