水曜日

雨だ。雨が降っている。朝、出かける前にテレビで聞いた話と、ちょっと違う。台風が呼んだのかもしれない、薄い雲の帯は、結局晴れないまま、とうとう雨を落とし始めた。割にしっかりと歩道を濡らし、革底の靴が、時々脚の勢いを横にすべらせる。力の抜けていくところが、どこか散水直後のMX408に似ている。

横断歩道を渡り、雨がたまった階段を上る。何の予兆もなく、足先を下ろした途端にすべる感覚は、慣れてくるとゲームのようで楽しくなる。南口の改札に着いて傘を畳むと、新しいmont-bellの折りたたみ傘が、気持ちよく雨をはじき落とす。真新しいナイロンの撥水ににんまりしながら、自動改札を抜けて、常磐線のホームへと降りていく。

階段を下りてすぐ、いつもの場所に並んでいるのは6人。二人ずつだから、ちょうど3列だ。その一番後ろに回って、次の快速が来るのを待ってみる。水曜日は、他と違って、夕方の帰宅ラッシュも何だか穏やかな気がする。ホームに入ってきたのは取手行き。雨粒が着いたガラス越しに、立っている人はまばらだ。

ドアが開いてから、落ち着いた感じで乗り込めるのも、水曜日ならでは、か。テレビで公表されていた鉄道路線の混雑ランキング。ランキング上位の駅でも、今日ばかりは平和なのだろうか・・・そんな思いを乗せて、雨の中、常磐線が走り出した。