ラストファイト! ~8

ポールのリードヴォーカルに、ジーン、エリックそしてトミーのバックコーラスが、何度も繰り返される。日本の片田舎、それもモトクロスコースにあふれるKISSサウンド・・・ニューヨークが聞いたら、きっと驚くだろうな。そんなイバMOTOの粋な計らいに満足していたら、いつの間にか第1レースのチェッカーが振られていた。すぐに、スターターのiguchi師匠が、エンジン始動の合図とばかりに右腕をぐるぐると回し始める。一斉に火の入ったマシン。2ストと4スト、まるっきり色の違う排気音が混ざり合って天に上り・・・ヘルメット越し、ポールの声が、少しずつ聴こえなくなっていった。

15秒前のボードがくるりと翻り、5秒前。静かに息を吐きながら、ひじを曲げて、上半身をハンドルに近づける。視線を集中していたバーがフッと倒れ、スロー再生のような動きで、KXのフロントタイヤが倒れたバーを乗り越える。上出来だ。ただ隣も、さすがはMCFAJの現役エキスパート。YZの青いフロントフェンダーが、鋭くKXの前にかぶってくる。フロントタイヤが近づいて、スロットルを握る右手に、nagashimaパパの左ひじがかすれる。一瞬の“我慢くらべ”・・・今日はワタシに分があった。

<つづく>