ラストファイト! ~9(完)

スタート直後のごたごたから抜け出して、フープスに入る前には、2番手まで頑張った。それでもsudaさんのマシンは、真ん中辺りを軽快に弾んでいる。この差は何だ・・・。

極端に歯数を増やしたリヤスプロケットが、ただでさえ短い“花の命”をさらに短くする。一瞬の加速の後で、すぐにギヤを変えなきゃいけないのに・・・何度もヘマをしては、加速を失ったギヤのまま、走り抜ける。と言って、半クラッチでごまかすにも限度がある。「シフトペダルの周りに泥が固まっていて・・・」と、言い訳が頭に浮かんできては、ヘルメットを強く横に振る。条件はみんな同じ・・・そう思いながら、慣れないギヤ比に悩まされて・・・一周目。スネークヒルの長い下りで、KXのリヤが大きく流れる。

何とか左足で立て直して、二周目。目に入ってくるのは、あちこちにワダチの刻まれた路面ばかり。視線が上を向いてくれない。フィニッシュラインでmachi-sanとtake-san、その先、真正面のバンクには、観戦を決め込んだokano師匠が、めずらしく手を振ってくれている。スネークの下り斜面で手を回すkubokiさん。そこを下った二連ジャンプで声を出してくれている、のじべーさんにもニセmanabuにも、軽くうなずくのが精一杯。それだけ真剣にKXを走らせても、前を行くsudaさんのCRFは離れていく。

コース脇で、CRF150RⅡを止めていたryo。楽しみにしていた最終戦は、前日の雨にやられて、慣れない4スト150の重さに泣かされてしまった。そんな背中を二回、通り過ぎて・・・sudaさんの次に、チェッカーを受ける。途中で鈍らな走りを見せなかったのが、せめてもの救い。悔し紛れに右手を上げて、思いっきりガッツポーズを決めてから、フィニッシュラインをまたぐ。真正面のバンクで左から右にKXを切り返すと・・・軽いはずの2スト85が、泥にまみれてずしりと腕に残った。