11hrs ～後編2/2

美声の持ち主suzukiさんは、あまり知られていないアーティストの曲ばかりを選んで歌う。ひさしぶりに聴くその声は、高音もしっかり伸びていて、うらやましい限りだ。kawadaさんは、まだ若かった頃の曲と、アニメ好きらしいマニアックな曲を代わる代わる、独特の節まわしで妖しく歌い上げる・・・歌トモが『大きな玉ねぎの下で』を歌いきって、ようやく時間になった・・・。腕時計が、ちょうど6時を指していた。

7時から歌い始めて11時間・・・途中で中休みすることもなく、歌いっぱなし。2人から3人、4人と増えていって、今夜ばかりはいつもの“一曲交替”ではなかったから、ずいぶん楽だった。それでも時間は、最後の仕事よりも長丁場・・・もうろうとしかけた頭で、駅までの歩道を歩いていく。改札を抜け、3人と別れて、ひとり内回りのホームへとエスカレーターを上る。土曜日、夜明け前の車両には、座っている乗客もまばらだ。新三郷駅に着く前に気を失って、あやうく南越谷駅を乗り過ごすところだったけど・・・気分のいい“仕事納め”になった。