ナノハナ! 4

スターティングバーが倒れて、クラッチレバーを放すまではうまくいったのに・・・その後が続かない。2速、3速とギヤを上げて、第1コーナーを過ぎるまでに、すっかり集団の後方へと追いやられてしまった。しかも今日は、アウトから被せてきた赤いマシンに前を譲る情けなさ・・・。頭が真っ白になって、そこから夢中で一周目を走りきる・・・去年の12月、最後のイバMOTOを走ったときと同じだ。それでも、わざわざ見に来てくれた友人にも、このままでいるわけにはいかない。すぐ前を走るマシンから立ち上がる砂煙に目を凝らして、その先に向かい、右手を捻っていく。

正気を失ったまま、がむしゃらに前だけを見て走る。2、3周しただろうか・・・KXの居場所が落ち着いて、やっと周りに気が向くようになった。うっすらと埃ののったゴーグルからは、うねる8つのコブが覗く。フープスの“ど真ん中”を半分ほど行ったところに、1台のマシンが見えた。赤いテールカウルに、黒地のoneのジャージ。どこか見覚えのある後ろ姿は・・・ryoだった。気づけばスタートから飛び出して・・・ちゃっかりワタシの前を走っていたのは、去年のレースとまったく同じ。2ストから4ストに乗り換えて日も浅く、まともに練習しちゃいないのに・・・まったく「悔しくてしかながない」。表彰台の上で口走ったことは本心だ。

<つづく>