Thailand

いつもの準急は、今日も東急電鉄の旧型車両。扉が開いた途端、むわっと空気が膨張して、外に流れ出す。雨の匂いがするその車両の中程に腰を下ろし、やんわりと揺られながら、静かに文庫本のページをめくっていく。それも、おそろしくのんびりと。

――結婚を間近に控えたイケメン男。赴任先のタイ、バンコクで日本に居る婚約者とは別の女性と関係を深めていく――まだ読み始めたばかりだから、この先、どういう話になっていくのかはわからない。だけど、「沓子」という扇情的な女性の姿が、雨音の向こうに佇んでいるようで・・・梅雨空に、この本はよく似合っている。

カラダをじんわりと包み込むような軽い湿り気が、赤道に近い異国の雰囲気を、肌から伝えてくる気がした。あまり海外に行く気持ちにはならないワタシも、どうせ行くなら、こうしたじっとり暑いところがイイ。できたら「ザ・オリエンタル、バンコク」のスイートで、優雅にくつろいでみたい・・・。