smart assist 4/4

「やってみます?かなり“ガツン”ときますけど・・・」

先進技術の説明にしては、ずいぶん控え目――と言うよりは、あまりうれしくないような口ぶりだけど――絶対に“停まる”自信をにじませながら、しっかりとした口調で提案してくれた。まさか体験する日が来るとは思いもしなかったけど、興味津々、そんなココロを見透かされないように、ちょっと弱々しい声音で「いいんですか?」とだけ返した。「ええ」と、笑顔をひとつこぼして、ずっと離れたハリボテのクルマを組み立てに走り出す。太めのストライプ地のシャツが、陽射しを浴びて弾んでいた。

ワタシを運転席に座らせてから、助手席に回り込む課長さん。走って戻ってきたせいか、艶のある褐色の額には汗が浮かんでいる。尾灯を照らしたようなクルマまで、延びた空間の左端には、めずらしい青色のパイロンが二本、等間隔に並んでいる。手前のパイロンを指さして「あそこを過ぎたら、アクセル踏まないでください」――まるで二輪車の教習、ふと急制動を思い出す。「わかりました」と短く答えて、押しボタン式のスターターでエンジンを目覚めさせた。フットペダルを踏み込みサイドブレーキを外して、ギヤをDレンジにシフト。アクセルをゆっくり踏み込むと、すぐに一本目のパイロンにさしかかる。そして、アクセルペダルから離した右足を、ブレーキペダルの上ではなく、ゆっくりと床に落とした――。

二本目のパイロンを横目で見て、いつもならブレーキペダルを踏み込むはずのところを越えても、SAが作動する気配はない。速度計に目をやると、赤い針は20km/hを指して――自転車と似たような速さでも、まるで速度を落とさず、まっすぐハリボテに向かって進む車内で、カラダが自然と後ろに引かれてこわばった。「あっ!」と小さく声を上げて、まぶたに力が入った瞬間、ほとんどハリボテにぶつかる寸前で、そこまで動く気配のなかったmoveのブレーキシステムが一気に作動して――一瞬ボンネットを下げたmoveが急停車する。およそ人間、それも素人にはとても真似のできない、機械仕掛けの見事な急制動だった。

「かなり“ガツン”ときますから」

確かにそのとおり、シートベルトが、がっちり上半身を押さえこんでいる。名前にあるスマートさは感じなかったけど、渋滞で追突することは何とか避けられそうだ。smart assist――続けて試乗した親父は・・・堪らず、かなり手前でブレーキランプを点灯させていた。この先進技術も、エアバッグと同じなのかもしれない――。