smart assist 3/4

<6/25の続き>

親父とお袋は、先に見せてもらった「move」じゃなくて「tanto」が気に入ったらしく、後部座席に乗り込んではしゃいでいる。こちらもCMではおなじみのクルマ。“ピラーレス”の効果もあって、車内は驚くほど広く開放的だ。このtantoと見比べたら・・・じっとしているmoveには、まったくイイところがない。電動のスライドドアに、またひとつ加点を与えて、二人ともご満悦だ。ただ、このままでは家で待つ弟に顔向けできない・・・。

少し離れた駐車場の隅に、もう一台、シャンパンゴールドのmoveが留められているのが見えた。近づいていくと、ディスチャージのヘッドランプを包み込んだ、クリアで厳つい顔つき。「moveカスタムですね」、いつの間にか傍に来ていた課長さんにうながされるまま、運転席に腰を下ろすと・・・なるほど、さっきのクルマより落ち着いた雰囲気の車内は、ナゼか偉くなったような気分にさせてくれる。薄日の当たっていた座面が熱くて、腿の後ろにじっとり汗がにじんできた。インパネから素直に顔を上げて、正面のフロントガラスに視線を移すと・・・20mほど離れた先で整備工場の壁に当たって止まる細長い空間に、クルマの後ろ姿の描かれたコンパネが、二つ折りになって立てかけられていた。テレビCMで見るようなしっかりした造形ではなくて、ただのハリボテ。その安っぽい作りが、かえって現実っぽい。

<つづく>