また、あの日に戻れるかな

南天から少し西に傾げた太陽。そこから射すヒカリが、バックストレートエンドをまぶしく照らしている。昼をはさんで、湿気た褐色は程よく乾き、踏み込むブレーキペダルが確実に路面を捉える。ブレーキレバーを引く人差し指にもチカラが入り、RMは前後バランスよく沈んで、最後の右コーナーを大きく回っていく。そして、陽だまりから杉の林の中を駆け抜ける一瞬、炭の燠火の残り香に、ふっと右手がゆるんだ。そのまま第1コーナーへと駆け上がりながら、今では遠くなってしまったキオクの欠片が、ひとつひとつよみがえってきた。

<つづく>