What is lacking? 2/3

<6/29の続き>

土曜の昼下がり。田舎の県道には、のんびりと自分勝手なクルマばかりが集まる。窓から入ってくる風が、ガラス越しの陽射しに、うまい具合に溶けこんで・・・乗り出す前から、まぶたが重たくなってきた。クルマの屋根に気を使うように不自然な姿勢で背伸びをして、利根川に沿って走る農道をひたすら東に向かい、“出口”の国道6号線を流れるクルマの影がはっきりとわかる辺りになって、目印の置かれた四つ角を左へと曲がる。目の前には緑の帯が水平に引かれ、その上に灰色の軽ワゴンが1台、頭を西にして停まっている。「せっかくの晴れなのに」・・・堤防へまっすぐにbongoを走らせながら、ふぅっとひとつ、息を吐く。突当たりから右へ――斜面にゆるやかに延びた上り坂を、Bongoとゆっくり手繰っていった。

土手から眺めると、雨をすった大地に草が伸び放題。すぐ真下で、2ストマシンの音がしている。その緑が楕円に削られた中を、言われるまま、ただ左に回っていた。ヘルメットからは色の付いた髪が垂れている――乗っているのは女の子――まだ始めたばかりなのか、吹け切れない、くぐもった音を引きずるようにして走り続けている。マシンは、草に埋もれてしまいそうなKX85Ⅱ。傍らでコースの石を拾っているのは・・・父親だろうか、それとも彼氏だろうか。とにかく今日は、この二人だけらしい。邪魔をしてしまいそうで、ちょっと心苦しいけど、ひと声あいさつをしてから堤防を上ってbongoまで戻り、同じ色のマシンを下ろし始める。ラダーから勢いよく転がるKX。そのフロントブレーキを力一杯握ると、乾いた砂利を弾いたフロントタイヤから、白い土埃が舞い上がった。

<つづく>