Evening star

水に溶かれた杏が、暗い藍色におされて、西の空の底のほうに沈んでいる。それを背に、きりりとした富士の姿が、左右へゆるやかに流れている。にじむように色を失くしていく橙の端には、黒灰色の雲が映りこむ。その雲を境にして空から色が消え、淡い藍色にどんどん塗られていく。そこから先は、漆黒の宵闇。その闇のなかで金星がひとつだけ、きららと瞬いていた。