MC戦記(第1戦)

午前5時。冬の朝は、白むどころか真っ黒なままで、まったく音もしない。思いきりカーテンを引いて、出窓の下を覗きこむ。夜半にも「降るかもしれません」と言われていた雨は、まだ落ちていなかった。薄い街灯の光が、路地を青く照らしている。ギリギリまで整備を続けさせられて、平日よりも短い夜だったのに・・・妙に冴えた目覚めが不思議な気分だ。興奮しすぎて、ほとんど眠っていなかったのかもしれない。

オイルヒーターは点けっ放し。ゆるんだ居間の空気のなか、灯油ストーブの臭いが鼻をつく。手早く珈琲を淹れて、ガラスポットにティーバッグを2つ放りこんで、熱いお湯を注ぐ。いつもより1時間ほど早いせいか、玄関のシロもネロも、素知らぬふりで丸くなっている。着替えと散歩をすませて、残りの荷物をbongoに詰めて――5時50分、予定より5分遅れて、ヘッドライトを灯したBongoが県道にすべりだす。

これから向かう東の空、黒くたなびく雲の上に、明けの明星が大きく瞬いている。身を乗り出してフロントガラスを見上げると、雲は切れていて、薄い藍色の空に三日月が白々と浮かんでいた。ちょっと期待させてくれる、いい感じの夜明けだ。

<つづく>