MC戦記(第1戦) 2

江戸川を渡り、野田市を抜けて、いつもの農道をいつものようにひたすら真っ直ぐに走る。雲は東の端に縮められていて、白んだ空には金星が光ったまま。ただ、追いやられた雲の色は重たそうな黒。紛れもない雨雲だ。利根川を越えて取手に入ると、歩道の表がしっとり濡れて光り、ところどころに大きな水たまりができている。

雨は確かに降っていた。それもたっぷりと、ついさっきまで・・・。きっと東に抜けていった雲の仕業だろう。助手席のryoが、視界の中に黒光りするアスファルトを見つけては、“カチパン”のMX408が雨水を吸い込んでくれているのを願うように、長く息を吐く。#21のCRF150RⅡは、IRCのハードタイヤを履いている。同じIRCの新品インターミディエイトタイヤ「iX-09W」をはめたワタシとは、気分も違うのだろう――。

それでも降ってはいないし、アタマの上には雲のない空が広がっていて、これから降ることはなさそうだ。最後の坂道を下ると、田んぼの向こうに、慣れ親しんだ“ホームコース”が覗いている。午前7時、雲の縁からうっすら伸びてきた陽射しに、褐色の斜面がゆれて・・・建ち並ぶのぼりやテントも華やいで見えた。

<つづく>