梅雨の晴れ間に~MCオフビ編~5

コースサイドに立つ人影がひとつふたつ、土煙の中に揺れている・・・ようやく周りに気が向くようになったのは、“すり鉢”に落ちる大ジャンプをひかえめに跳び上がった時だ。ほとんど最後尾からのレースになったのに、「目の前に居るマシンよりも、ここはうまく跳べそうだ」――なんてうそぶけるほど、乾いた土のはるか上で、気分は上々。KX85-Ⅱの短いサイレンサーからも、乾いた音が流れていく。練習走行を耐えた左ヒザも、まだまだ大丈夫。軽井沢よりも強い光の中、少しは楽しめそうな気がしてきた。

すり鉢の縁をかすめたら、底から這い上がるようにして、リズムセクションへと跳びだす。カラダが本調子ならフープスと呼べなくもない、ふぞろいのうねりがゆるく右に曲がりながら続くと、くるりと左に回されて、今度はシングル、ダブル、ロングと形の違うジャンプを3つ並べられる。最後の長くて低いテーブルトップを跳んだ先は、なだらかな広い下り坂。筑波の最終コーナーをひっくり返したような左カーブを豪快に回りきると、前後に短いキャメルのフィニッシュジャンプが待っている。

スタートして2つのコーナーを回る間さえ無ければ、カチパンに小砂利が浮いて・・・整備をサボったMX408ぐらいの感覚だ。夏空の下、白く光る路面に・・・カラダがなじみ始める。

<つづく>