8:41AM

幾重にも色を重ねて、仕上げに小さな光の粒をあしらうようなネイルに慣れてしまった目に、真紅の指先が鮮やかだ。つり革を掴む手は透き通るようで、手首にBaby-Gの白いバンドが巻かれている。黒のハーフコートの下には、黒いニットのワンピース、そこから黒いタイツにくるまれた細い曲線が、絡み合い、きれいに伸びている。モノトーンに浮かんだ差し色、カノジョの狙いは的中だ。このシンプルだけど押しの強いセンスに元気をもらい、プラットホームにあふれた黒い人波をかき分け、階段を一段抜いて駆け上がっていく。途中、踊り場から上を見ると、窓際にあるコーヒーショップから紛れてきた朝日が、コンコースの白い壁に強く跳ね返っていた。