どうして乗るのかって? 1/2

何かの雑誌を見たのか、どこかの小説の記憶か・・・。

昼下がりのアスファルトの上、スモークシールドに照り返しのヒカリがまぶしく映り込む。いつもと違うロードノイズに、風切り音が小さく交ざって、思わず目線を上げる。雲が白く、空は青く、水を張った田んぼには、苗の緑が点のようにきれいに並んでいる。 

クラッチレバーを左の手のひらで握りしめて、左足がシフトペダルを踏み込む。そのままつま先をペダルの下にくぐらせ、右の手のひらがゆっくりとスロットルを回していくのに合わせて、左手が、クラッチレバーを握るチカラを緩めていく。回転を上げようとするエンジンがその排気音を静かにした一瞬に、するすると車体が動き始める。

右側に続く白い点線が、雑木林の向こう、視界の左端に消えている。スロットルは開けたまま、その流れる白い線に車体を寄せて、左に曲がるアスファルトの先をアタマの中に描く。すぅっと右の手のひらを開くようにしてチカラを抜いて、人差し指と中指でブレーキレバーを引きずり、右足のつま先がブレーキペダルに触れる。右半分の動きに反応するように、左の人差し指がクラッチレバーを引き寄せ、駆動が抜けた瞬間、左足がシフトペダルを二回踏みつける。

<つづく>