日なたの匂い 3

運転席から降りるときも、荷室からKX85-Ⅱを下ろすときも、左ヒザがねじれてしまわないように脚の動く方向にカラダを正対させて・・・その姿は、まるでASIMOのよう。真正面と真後ろにだけ進むように、カラダの角度を決めてから動いていると、急ぎたくても急げない。そんな風でのんきにやっていたら、さっきまでメインジェットを交換していた師匠のCRFに火が入った。午前中、それも一本目から本気で走りだす師匠に、最近はすっかりお株を奪われてしまっている。パンパンとはじけるような排気音を耳で追いかけながら、頼みの“助っ人外国人”を左ヒザにはめる。少しでも気を許すと、外側にズレて固まる左ヒザ。GWの無邪気な戯れが、大きな代償となって残ってしまって・・・痛くて左脚だけでは踏ん張れない。不自由に折り合いをつけ、ようやくモトパンにSIDIのブーツを合わせ終わると、うっすらと埃をかぶってCRF150RⅡが戻ってきた。ヘルメットを脱ぐと、頬の下から口の周りに、濡れた褐色がへばりついていた。