金色の・・・ 4

書き終えた申込書に5千円札を挿し込んで、全開の窓越し、saitoさんに手渡す。そして、お釣りを待っている間に、ひとり、懐かしい顔が近づいてきた。もしかしたら、オリンピックの単位で会っていないかもしれない彼は、HERO'Sを一緒に走っていた仲間だ。そう、まだryoの“本番車”を本当の持ち主が駆っていた頃の話。後ろに着けているトランポはいない、ishibashiさんとの再会をひとしきり喜んでから、ゆっくりBONGOを前に出す。iguchi師匠の軽バンが停まる向こう側へハンドルを回していくと・・・#78のハイエース、kyo-chanが、その走りとはにつかわない人なつっこい笑顔で、こちらをうかがっていた。コースサイドにはmatsunagaさんのKX85-Ⅱも見えて・・・夏日らしい、にぎやかな一日になりそうだ。

運転席から降りるワタシの周りに、みんなの視線が集まってくる。もちろんそれは、ワタシに向けられているわけでなく、注目されているのは、ワタシの積んできた85X。これで二回目の愛機は、橙色も鮮やかで、新車然としている。感想を訊かれても、まだ二回目ではわからないことばかり、とにかく「エンジンの反応が鋭い」ことと、シート高が高すぎて「足が届かない」ことを伝えるのがやっとだ。それでも羨望のまなざしに、悪い気はしない。着替える前に音量検査にCRFを持ち込んだishibashiさんとは逆に、下半身だけ着替えをすませてから、ちょっと足をかけにくいキックペダルを数回踏み下ろし、2スト85ccのエンジンに火を入れる。KXの容量の半分ほど、細くスタイリッシュなサイレンサーからは、ひときわカン高い排気音が、白い煙とともに吐き出される。85SXらしさを感じられる、お気に入りの瞬間だ。

もちろん、排気音が規制値に達することはなく、一回の測定で検査から解放されて、パドックへと戻っていく。

<つづく>