金色の・・・ 3

<7/13の続き>

二日前、ネットにアップされていた写真で、すっかり水没していたスターティングエリアも、どうにか半分まで土色が戻っていた。他に見渡せるところもすべて、乾いた褐色を太陽の下にさらしている。先に坂を下りきったざりままの後ろに着くと、流行りの曲がこぼれる窓の外から、「カラオケの練習ですか?」と声がすべり込んできた。「うん」と短く答えて、声の主saitoさんから、走行申込書の挟まったボードを受け取る。「マシン」の欄にしっかり“85SX”と、少し強めに文字をなぞり、申込書にボールペンを走らせていく。申込書を書き上げ、顔を上げると、CARAVANの居なくなって開けた視界に、パドックが映る。ここ最近、9時ギリギリになって到着、今日はそれよりも30分以上早いのに、iguchi師匠のCRF150R-Ⅱはもう、パドックに下ろされていた。そのずっと奥、広がる防音壁の真下に、雨水がぐるりと大きな水たまりをつくり、そこにトンボが何度も卵を産み落としているのが見えた。透きとおった小さな羽が、陽射しを受けてキラキラ光る。見るものすべて、何もかもがきらめいて、気分も上々だ。

<つづく>